人間形成の場として
 垣根を越え、様々な闘いの舞台で活躍する正道会館の選手に憧れて、近年入門者は飛躍的に増加しています。
 それらの人々にとって、「強さ」の追求は普遍の指標となっていますが、それは単に相手を倒すことではなく、人生を生きていく上で必要な人間的な強さの追求にあると思います。
 規格化された現代社会の構造の中で、時として見失いがちな自分の存在意義を、空手道の修行を通じて確立しようとするその姿は、まさに自分との闘いです。
 そして、その過程で得られた成果は自らの人生に大きな自信を与えてくれるはずです。
入会後の流れ
 正道空手は、全日本選手権大会やK-1などからも実戦的な格闘技として広く認識されていますが、本来、手に何も持たず自らの体を鍛えることで身を守る護身術として非常に優れた武道なのです。
 また、右から左、あるいは左から右といった一方通行の運動競技が多い中で、空手は左右対称に身体全体を駆使し、筋力強化、身体の柔軟性、適度な有酸素運動による心肺機能の強化等にも優れた効果を発揮します。
 そして日常生活で抱えた現代人の心身の悩み等を発散する手段としても大変に有効な礼儀礼節を重んじる日本古来の武道なのです。
 
 このように「正道空手とは?」という命題については、学ぶ人それぞれの目的によってその数だけ答えがあるのです。
 それぞれがその目的に応じて無理せずに、楽しく稽古を続けていくことが継続させる為の秘訣であり、それが皆さんの目的達成に大きな力となるでしょう。
入会したら
【 挨拶 】
 まず、道場生同士が「押忍!(おす)こんにちは」、「押忍、失礼します」、「押忍、有難うございました」等と挨拶している事に戸惑うかも知れません。この「押忍」は空手道の世界独特の挨拶です。
 しかしながら、挨拶という、社会生活の基本的な礼節さえ忘れられつつある中で道場では、中に入る時、退出する時、互いに稽古に入る時等、行動の節目々々に必ず挨拶をします。そして「押忍、○○○」の「押忍」を取れば、日常社会にそのまま通用します。挨拶とは人間関係の潤滑油なのです。
 そして「押忍」という言葉には「押して忍ぶ」、即ち心は常に前向きに、敵に背を向けず物事と正面から対峙しながらもいたずらに力や虚勢を振り回さず、相手を思いやり、そして自分自身を戒めるという忍耐の意味があるのです。
 
【 道衣の着方 】
 空手道衣というものを、初めて身に付ける人がほとんどだと思います。もちろん、お気軽に指導員にお声を掛けて頂ければ結構なのですが、既に入門している「先輩」方に聞いてみるのも、道場における新たなる第一歩ではないでしょうか?
 
【 稽古時間に遅れて参加する時は 】
 道衣に着替え、道場内で柔軟体操を十分に行って下さい。終わったら、稽古が行われている一番後ろの場所で神棚に背を向けて正座・黙想し、気持ちを落ち着けて今日の稽古への意欲を噛み締めて下さい。
 指導員から「入って下さい」という声がかかったら「押忍!御願いします」と言う挨拶を元気よくしてから稽古に参加して下さい。
稽古に参加しましょう
 入会者のほとんどが空手道を始めて修業される方ばかりです。なかには今まで体を動かす機会が無かった方もいらっしゃいます。経験者はむしろ稀でしょう。なんの心配も要りません。白紙の画用紙に初めて筆を入れる様に、どうぞ思い切って、伸び伸びと御自分の空手の道を描いていって下さい。
 
 稽古内容ですが、先ず「基本稽古」で突き技や蹴り技、受け技等を学びます。皆の掛け声と共に自己の技を確認するのです。空手道は個人種目で有りながら、団体種目でもあるのです。
 そして実際に二人一組となって攻防を学ぶ「一本組手」稽古を行います。ここでは手足に防具を付け安心かつ安全に技術を習得する事が出来ます。ここで学んだ攻め方、あるいは受け方を更に「自由組手」稽古で試します。実際に打ち合うわけですが、初心者の方はどうぞご安心下さい。上級者が下級者に胸を貸し、楽しみながら実戦の攻防を学べます。
 勿論、道場には大会を目指す方、昇級昇段を目指す方、体力向上を目指す方等、いろいろな目的を持った方たちが集いますので、それぞれの目的に応じた内容で稽古を進めていき、自己を研鑽していきます。
審査の受験を目指しましょう
 入会して三ヶ月、稽古回数で三十回以上を目安にして、昇級審査の受験を目指してみましょう。審査内容は強い弱い、上手い下手を審査するのではありません。稽古の中で正しい身体の使い方を理解しているかを審査するのです。
 基本、型、一本組手、組手(初めて受験する四級黄帯審査に、組手審査はありません)、体力の各項目とも五点満点で採点し、三点平均で合格となります。二点が多かったり、一点が付いてしまうと「不合格」で再審査となったり、合格を一定期間お預けにする「保留」という結果が出ますが、逆に四点が沢山付いたり五点が付いたりすると、一級飛んで上位級に合格する「飛び級」もあります。
 入門後の経過日数や稽古出席日数はあくまでも目安です。自分自身で納得の行く稽古を積んだ上で、果敢に挑戦してみましょう。帯は貰うものではありません。自分で勝ち取るものなのです。
大会に出場できます
 四級黄帯を取得すると各種大会に出場出来ます。大会も各部門が有り、一般初級及び中級者が体重別に戦うBクラス、上級者が全日本大会の切符を目指し体重別に戦うAクラス、また壮年の部や女子の部等、それぞれが自分の力を試せる場となっております。
 大会だけが空手道ではありませんが、それを目指し努力したからこそ得られる物が必ずあるはずです。ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
中級審査を目指しましょう
 色帯に変わってから三ヶ月以上経過すれば基本的には次の審査を受験する資格を得ます。中級審査では、基本技により速さや力強さが加味されていなければなりません。
 またそれぞれの級に規定された型の完成度も要求されます。一本組手審査は決まっていない技の受け返しを表現しなければならないので、より理解度が高くないとこなせません。自由組手は連続組手が加わり、より厳しいものとなってきます。
 その分、帯を勝ち得た時の喜びと充実感はその帯の色の如く、更に濃くなっていく事でしょう。
昇段審査
 入門して三~五年を目標に、初段・黒帯を目指しましょう。
 まず、基本技に欠点があると黒帯取得は難しくなります。これは日々の稽古の中でより向上心を持ちながら鍛錬を繰り返し、汗を流した者だけが身に付くものです。
 そして型、一本組手に加え、自由組手では「十人連続組手」を行います。十人を闘い抜いても負けが過半数を超えると不合格になりますので正に難関なのです。続いて体力審査を行い実技試験が終了します。そして筆記試験に合格すると、晴れて黒帯となります。
 しかし、黒帯取得が終点ではありません。ここからが本当の意味で修行の始まりなのです。更に自己を研鑽し、真の強さを追及され、武道「正道空手」を探求していって下さい。
 黒帯への道は、入門したその日からもう始まっています。